電子工学を志す高校生の皆さんへ

“電子の働きをいろいろと利用すること”を『電子工学』といいますが、簡単にいえば“物質の中にある自由電子の動きを任意に操ること”であるといえます。例えば、テレビ、DVDレコーダ、携帯電話、パソコン、電子レンジ、エアコンなどの家電製品だけではなく、自動車のようなものの中でも“電子の動きが正確に制御”されて、さまざまな機器が動いているのです。そのため、電子工学は私たちの日々の生活の中で、とても身近なところにあるのです。

古代ギリシャでは、狼煙の色を白、黒などと変えることで情報伝達が行われており、「すべての道はローマに通ず」といわれた古代ローマ帝国でも、街道沿いには同様の通信網が整備されていました。今では光ファイバなどを使った通信網が地球規模で整備され、世界中の情報が瞬時に手に入るようになりました。『これからは情報の時代である』などと良くいわれますが、装置の中ではひとつひとつの情報が、電圧の高低、つまり電子の有無として扱われていることを忘れてはいけません。

今よりもっと高速な情報通信システムを作るには、『物質中での電子の動きをより高速、かつ精密に制御することこそが本質的な方法』であるといえます。つまり“電子の動きが新しい世界を創る”のです。
電子にはスピンと呼ばれる自転運動など、私たちが今まで積極的に扱ってこなかった“働き”があります。電子工学はナノテクノロジーやバイオニクスなどといった新しい研究分野と融合しながらさまざまな電子の働きを利用して、これからも便利な社会を創りだす原動力として発展していきます。先人が切り開いて整理した学問体系を学び、自身の人格を磨くことで人間力を高め、新しい価値を創造することで、よりよい世界を一緒に創っていきましょう。